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選評
哀しい句集
天からの賜りもの「噂」の作品五千四百句ほどを、お受け致しました。感動と緊張のなかで心より感謝申しあげます。
画伯、三岸節子画集、文集の中のことば。「作品は人格そのものです/完全な人間になりたい/やさしい人間になりたい/人間を完成させるために磨いているんです」(九十二歳談)
川柳人にこんなにも、ぴったりの言葉も無いと、心打たれながら。必死に、ながい時間をかけて作品との対決でした、同想句は多いと覚悟はしていましたが、同想句の山がどんどんできて、最も多い、七十五日の噂が約二百句、次は尾鰭の句、赴任地の句と、句箋の山が増えるたびに、苦悩も増えてゆきました、その山の中から眼の覚めるような作品が現れたり、人間愛をとおした、ユーモアの作品に微笑んだり、ドラマの句に喜びました、
選は私との闘い、川柳本来の姿を新鮮にまた立体的に展開された特選三句と、秀句十句に這えたことに感激しながら、そして二百句を選びました。
選句中とても哀しい句箋を見つけました。
佳き友よ我れ亡きあとも噂せよ
よき友よ我れ亡きあとも噂せよ
坂口愛舟
この句は、岸本吟一氏、岩井三窓氏、森中恵美子氏を号泣させた愛舟さんでなければ詠めない作品なのです。
七十五日噂ぴったり止みました
七十五日風がぴったり止みました
外山あきら
この二句、番傘一万句集に掲載されています。
三岸画伯は九十歳越えても人格を磨くために描いているのです。私たちに研鑚をうながす時が来たのです。
木野由紀子

 

 

 

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